この記事では、光学系の基本的な構成について記します。
光学系の構成要素
光学系とは、「光の屈折や反射、回折等の物理現象を利用して、物体の像を作ったり、集光したりするシステム」のことです。具体例を挙げると、「カメラのレンズ」「虫眼鏡」「自動車のヘッドランプ」「鏡」などがあります。
それでは、最低限何があれば光学系と呼べるでしょうか?それは、「物体」と「像」そして「絞り」です。これを幾何光学的に説明するとFig.1で表されます。図の左側から「物(ぶつ)」と「絞り(しぼり)」、「像(ぞう)」と呼びます。また、それぞれが面として形成されている場合は、「物面(ぶつめん)」と「絞り面(しぼりめん)」、「像面(ぞうめん)」と呼びます。このように、光学設計では光学的な作用をする構成要素を面と表現します。
物面と絞り面、像面は一直線上に並んで配置されています。この線のことを光軸と呼びます。光は物から射出され、像に到達します。Fig.1では図の左から右側に光が進み、このような図を「光路図(こうろず)」と呼びます。

Fig.1 光学系の最小構成要素
軸上物点の光学系
物面は無数の点光源(物点)が集まって、面を形成していると考えます。例えば、液晶ディスプレイが挙げられ、1ピクセルが物点に相当します。Fig.2では便宜上、物面の中心(光軸上)にある物点から出た光のみを赤色で表現しています。このような物点のことを「軸上物点(じくじょうぶってん)」と呼びます。便宜上と言ったのは,特徴的な位置にある点光源のみに着目することで現象を把握し易くするためです。
物点から出た光の一部が絞り面で選び抜かれ、像面に到達します。絞りは中心に穴の空いた遮光部材で、穴以外を通る光の進行を止める作用があります。そのため、絞りのことを英語で「STOP」と呼ぶことがあります。
像面は光を検出する作用があり、例えば、CMOSイメージセンサなどが挙げられます。
光は本来無数に飛んでいますが、Fig.2では光線を特徴的な3本の赤線で表現しています。絞りの中心を通る光線を「主光線(しゅこうせん)」、絞りの上端を通る光線を「上光線(じょうこうせん)」、絞りの下端を通る光線を「下光線(げこうせん)」と呼びます。上光線と下光線を合わせてマージナル光線と呼びます。

Fig.2 軸上物点の光学系
軸外物点の光学系
物点が光軸以外の場所にある場合の光学系をFig.3に示します。このような物点のことを「軸外物点(じくがいぶってん)」と呼びます。Fig.2と同様に光線を3本の赤線で表しています。絞りの中心を通る光線を主光線、絞りの上端を通る光線を上光線、絞りの下端を通る光線を下光線と呼びます。

Fig.3 軸外物点の光学系
ピンホールカメラの光学系
軸上物点と軸外物点の光線を同時に表示した光路図をFig.4に示します。軸外物点は上下2つあります。また、各物点から出る光線の本数を増やし、主光線やマージナル光線以外の光線も表示しています。各物点から出た光は像面上で交わっています。これは各物点が像面上で分解できていない、すなわち、結像しない状態を表しています。

Fig.4 軸上と軸外の物点の光学系
それでは、各物点から出た光が各々交わらないようにするにはどうすればよいでしょうか?
最もシンプルな方法は、絞りを絞る(光が通る領域を狭くする)ことです。その光路図をFig.5に示します。絞りを通過する光は減りましたが、各物点から出た光が像面で交わらなくなり、像面において1点にまとまりました。この像面上の点を「像点(ぞうてん)」と呼びます。これで各物点が像面上で分解できる(結像している)状態になりました。このような光学系を「ピンホールカメラ」と言います。市販されている多くのカメラはレンズを使ってこの結像状態を作り出しますが、このピンホールカメラはレンズを使用せずに結像状態を作り出せます。
しかし、ピンホールカメラは絞りを絞るために像面に到達する光線が減り、像が暗くなるデメリットがあります。そのため、市販されているカメラレンズでは、明るさと結像状態の両立を複数枚のレンズを組み合わせることで達成しています。レンズの明るさのことをF#(Fナンバー)といい、F#が小さいレンズほど明るいレンズであることを表しています。

Fig.5 ピンホールカメラの光学系

